朧月夜
“その好きなひとを大切にしてね”
あなたが
息を呑んだ
“わかったよ”
しばらくして
あなたは言った
“大切にする”
その言葉に
微笑んだ
“短い間だったけどありがとう”
わたしが微笑むと
あなたもつられて微笑んだ
“ねぇ、もう行っていいよ”
鼻のおくが
ツンとして
慌てて言った
涙なんて
見せたくない
最後くらい
カッコつけさせて
素直になれない私の
これが最後の抵抗だから
“あのひとが待ってるんでしょう?”