Fanfare
丁度ホテルの入り口を潜ろうとした時だった。
「おい。」
背後から聞こえた声に振り向くとそこにいたのは
「徹…」
息を切らせた徹は無理矢理私の手を引っ張ると
「なにしてんだよ。てめぇ家から出んなって言っただろうが…」
私を抱き締めた。
ナンパ男は徹の登場にヒビったのかいつの間にか居なくなっていた。
「…ねぇ…抱いてよ」
「あぁ…待ってろ。」
徹はそう言うと自分の着ていたパーカーやヘルメットを私に被せ
どこから出しのか分からないサングラスまでかけさせた。
そして私の手を引きバイクが停まっている路肩に向かって歩き出した。
「乗れ。」
嫌そうな顔をして頭を掻く徹は
「本当は連れて行きたくねぇーんだけどな…」
と呟くとバイクを発進させた。