帰ってきたライオン
「長い文でしたね」
「すごいとしか言いようがないね」
写真立てを持ってきたのはグリーンさんの友人。
あー、外国人ならやりかねないなって納得するところでもある。
日本人だったら荷物を玄関前に置いてかないけど、オーストラリア人ならやりかねない。
しかも受け取ったかどうかはどうでもよくて、自分がここに置いたという事実が大事。
羊君もそういうとこあるので、オーストラリア、けっこう過ごしやすいんじゃないかと思ったり。
なので、この写真立て事件はとんと府に落ちた。
このメールのいいたいところはなんなんだ。
要点はどこに隠れてる?
これだけ無駄に長いメールを打つくらいだ、思い入れがあるはず。
こどもの話、それに両親のことまで出してきた。
グリーンさんが羊君を必要としていたのも読み取れる。
とても大切で、心の支えになっていたってのも分かる。
それに、この文面だと羊君もまんざらじゃなかったって読み取れる。
私のことをどういう形で紹介していたんだろうか。いろいろ聞いているようだけど、ここ、気になる。
でもグリーンさんは何一つ触れていない。
パソコンも羊君のパソコンなわけだ。
そしてどういうわけかオーストラリアに置いていっているなんて、深読みしたら、また帰るから置いていったとも言えそうな気もする。
「ねえ、これさ、何がしたいのかな?」
「んー、したいというよりは、そうですね、きっと羊さんは成田さんの元へ帰った。もしくは成田さんが呼び戻したとでも思ってるんじゃないでしょうか」
「そんなニュアンスなの?」
「たぶんそんなかんじです」
「返信返せ的な?」
「そんな挑戦的じゃないかんじですよ。さりげなく、『私たちは楽しかった。家族ぐるみの付き合いだ』って言ってます」
だとしたら、写真立ては見せつけるためのものでもあるし、羊君へのメッセージでもある。
ふと思った。
なんて行動的な人なんだろう。
もし私だったらここまでできるか。
オーストラリアの羊君の住所に二人で撮った写真を送りつけることができるか?
答えは簡単。
否だ。