帰ってきたライオン
がしかし、余計なお節介とグリーンへ申し訳ないと思っていた矢先に、いくら私でもこれを見せられたらイラっとする、むしろムカッとする。通り越して頭ブチっとすることが起こった。
とりあえず、ふざけんな。
なんだこの添付写真。
こんなもんをよくもまあ送ってきたものだ。さすがに怒るよこれは。
パソコンの画面全体にに叩きつけられた一枚の写真に怒りを覚えた。
睨むこと数分、スリープモードに入った瞬間、適当にキーを叩き、浮き上がらせるその問題の写真。
土曜日の昼下がり、私はまたもパジャマのまま録画したお笑いを見るともなしにぼーっと眺めていたとき、『メールが来ましたよ』というお知らせ音が聞こえ、目はテレビを、指はパソコンをタップしていた。
松田氏は新しいレシピを考案したとかで、昨夜仕事帰りに買い込んできた野菜や肉をやっつけにかかっている。
台所からは鼻唄に楽しげなハミング。軽快な包丁の音が土曜日の午後を癒してくれる。
はずだった、いつもならば。
しかし、今日はどうやら勝手が違う。この写真のおかげで癒されない。
癒しを釘で傷つけるような、そんな感じだ。
本当に本当に本当に心の底からイラッとくると私は眉毛を掻く癖がある。
両眉毛をがりがりと、鳥の羽をむしるように掻く。
これを最後にやったのはもうかれこれ10年ぐらい前じゃないだろうか。
そんなわけでこんな行動をしたのが久しぶりだったってのもあり、こんなこと昔もあったなと不覚にも懐かしく思ってしまった。
「どうしたんですか眉毛掻きまくって。しかも引っ張ってますけど、全部抜けちゃいますよ」
「うっさい。抜けたら墨入れるわ」
「ご機嫌ななめですね」
「ななめなんかじゃないよ。好調の真逆に位置してる」
「何があったんですか」
「これ」
ノートパソコンを雑に松田氏側に向けた。
両手にマグカップを持っている松田氏はこたつテーブルに音を立てずに丁寧に置き、ひとつを私に向けてすすすすと押し出した。
温かい紅茶だ。
曰く、暑い日、蒸し暑い日にこそ温かいものを飲んだほうがいいということで、体の中が温かくなると外の温度もさほど気にならなくなりますよ。
と、涼しい顔で言い、画面に弾き出されている写真を見て、眉間に皺を寄せて顔を近づけた。
「ね、イラッとくるでしょ」
「……はあ……まあ、確かに言われてみれば少しはそうなります」