帰ってきたライオン
だから私は……
松田氏の方を向いた。
寝てない。
絶対起きてる。
だってそう、私の感は当たる。
ごくりと唾を飲んだ。
松田氏……
と、声を出そうとして口を開きかけて考えた。
だから、今までそんなことしたことないけど、でも今夜はそうしなければならないと思ったってか感じたから、
きゅっと右手を握りしめげんこつを作る。
ぱっと開いて気合いをこめた。
右手をするすると、しかしゆるゆると松田氏の借地に伸ばし、布団の中へと進入する。
暖かい。
私の布団より暖かい。(ちっ)
手を伸ばす直地点は松田氏の手。
しかしどこにあるのか分からない。でも、『感』で探し当てる。
もそもそと動いているのを絶対に感じ取ってるはずだ。だって、暗くてシルエットしか見えないけど、松田氏、目、開けてるのが分かる。
拒否しないってことは大丈夫だよね?
かなりドキドキしてるからね私。しにそうだからね。そろそろしぬよ。
あ。
ようやく柔らかいものにたどり着いた。指先が手の甲を触った。暖かくて骨ばった、でもふわっとした手。
触れた時、松田氏の手がびくっとしたのも伝わった。
だから、自分の手を滑り込ませてぎゅっと握った。
脂汗だらだら。心臓ばくばく。喉からから。
どうしよう、拒否られたらどうしようってものすごーく怖い。
私はぎゅっとしてるけど、松田氏はぎゅっとしてくれない。