帰ってきたライオン
しばらくそうしてたけど、やっぱり私だけがぎゅっとしていてるだけ。
天井の闇が喜び勇んでどかっと私の頭上に落ちてきたようでそのまま押し潰されそうで気分がどーんと沈む。
真っ暗な闇の底へ加速しながら滑り落ちていくような気持ちになる。
やんなきゃよかった。
こんなことしなきゃよかったと後悔。
きっともう愛想をつかしたんだ。きっともう気持ちはグリーンのところにあるんだ。きっともう私のことなんてなんとも思ってないんだ。
でももう遅い。……やんなきゃよかったんだ。
ゆっくりと天井に顔を向けて、ぎゅっとしていた手をほどき、重なったぎこちない手をするりと離そうとした、
そのとき、
倍の力で握りしめられた。
息を飲み、呼吸することを忘れた。
ゆっくりと時間をかけて松田氏のほうを向くと、さっきと同じように上を向いてはいるけと、口元がにっと笑っているのが分かる。
隣から感じるオーラで分かる。
松田氏の手はぎゅっと私の手を握っているけど、私の手は脱力してる。さっきと反対だ。
だからもう一度ぎゅっとしてみた。
覆うように手を包んでくれる柔らかい手があって、
二人で同じような強さで握って、上を向いていた松田氏もこっちを向いていて、真っ暗で分からないけどお互い笑ってる。
ほっこりした気持ちが体を包み、松田氏がおやすみって言ったのが分かった。
今まで闇の底で沈みかけていた私はどこへ行ったのか、今はほくほくの暖かい場所でぬくぬくしている。
頷いて目を閉じた。
繋いだ手はずっと離さずに。