帰ってきたライオン
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「これ、気に入るか分からないけど」
小さな箱を掌に乗せてはにかんだ松田氏は、
「プレゼントとかってよく分からないから、グリーンさんに頼んで一緒に見てもらったんです」
羊君と食事した後に目撃した松田氏とグリーンは、日本語を教えるかわりにプレゼントを選ぶのを付き合うということを条件に怒濤の語学レッスンを引き受けたそうだ。
一夜漬けさながら寝る時間も惜しんで勉強したため、松田氏は家へ帰ることができなかった。
ホテルで羊君が松田氏に耳打ちしたことといえば、
『なんもねえから安心しな』
といったことだった。なにかあるわけがないのに。
「開けていい?」
「もちろん」
ん?
ええと、なんて言ったらいいんだろう。
そこにあるのはネックレス。
ゴールドの細身のチェーンのものなんだけど、
なぜだかそこにはコアラのような動物がいて、星につかまっているという不思議なもの。
「あ、ありがと。うれしい」棒読み。
「好きじゃなかった?」
「いや、斬新でいい! インパクトあるし、コアラかわいいし」
「よかった」
ホッとした松田氏は胸に手を当て、肩から力を抜いた。
そんなの見ちゃったらなんかこう、眉毛八の字に下がって唇尖っちゃうよね。
「大切にするね」
「はい」
最初に貰ったプレゼントはネックレス。
きっとこれはグリーンのごり押しだと思うけど。
でも、絶対に外さない。
肌身はなさずつけていようと早速つけてみた。