帰ってきたライオン
残りの女子は最初のうちしれっと冷たい視線を抜け駆けした茶髪巻き毛に向けていたが、残りの男性陣も近くで見たら何気にいい顔をしていることに気をよくし、勝負笑顔と態度にころりと変えた。
なんて現金な。
「あの人たち、かなり合コン慣れしてますからね」
「やっぱりそうなんだ。だと思ったけどさ」
「花田さんみたいな感じ、狙ってますからね」
「あー……納得納得」
「私もですけど」
「え、そうなんだ。行かなくていいの?」
「こんなやつら、私に話しかけてきた時点で完無視ですよ。私と話す土俵にも立ってないっていうか」
うん、きっと自分のところに誰も来ないからムッとしてるんだと思う。しかしながら美人タイプで見た感じツンツンしてそうな上田さんに声をかけられるのはそういないような気もする。本人まったく違うんだけど。
「それに私、狙ってるのいますし」
「っえー!!! 誰?」
あまりの他声が大きかったのか、丁度トイレから戻ってきたチーフが私と上田さんの間に座って『なになになんの話?』とチャウチャウのような屈託のない笑顔で話に参加してきた。
チーフもなかなかの男前でこれまたファンも多い。現に、残りの二人の女子も松田氏を取られて以降、視線はにチーフに向けられていた。
宴も中程、満開に開花し今が盛りの華々、上田さんの狙っている人の話にチーフと一緒になって興味津々となり話に花をわんさか咲かせていた。
後ろではチャンカチャンカチャンカチャンカと祭り囃子が聞こえてきそうなくらいにわいわいしている。
「なんで名前知らないのよ上田ちゃん」
いい感じに出来上がっているチーフは私の肩に腕を回し、
『ねえ、そう思うよね美桜ちゃん』と馴れ馴れしく話しかけてくるが、私も酒が回っていてふーわふわいい感じになっていたのでそれほど深く考えず、
「そうだよ、上田さんはやく思い出してよ、名前なんてーの。誰? どんなかんじの人? だれー?」などと煽っていた。
ぐいっと残りのビールを飲み干したたところで背中に衝撃を受けてしばらく呼吸が止まった。喉をながれている途中のビールも喉元で一時停止した。
ごくっとなんとか飲み干したあと、痛さがようやく伝わり、
「痛いし! なに! てか誰!」
と、背中に手を当てながら後ろを振り返ると、そこにいたのは松田氏。