帰ってきたライオン

感情を消し去った。

私にはそうだ、羊君がいる。
いや、いた。
いや、いる。

ええい、この際どっちでもいい。とりあえずだ、考えてみた。あと数時間で今年が終わる。からの、新しい年に向けて私の気持ちも片付けなければならない。

さっぱりすっきり爽やかになって新年を迎えたい。

5年連絡がない。もう、ここらへんでケリをつけた方がいい。そして前へ進もう。

「成田さん、薬飲んだらもう寝た方がいいですよ」

「何言ってる。今日で今年が終わるんだよ。新年になるまで、カウントダウンしなきゃだめでしょ」

「ダメなんですか」

「そう。松田氏は寝たかったら寝ていいよ。起こすけど」

「……起きてますよ」

「整理してみた」

「唐突にきましたね。何をですか?」

「私の(元)彼氏」

「……はぁ」

飲みかけの甘酒をトンと軽く音をたててこたつの上に置き、半纏を首もとまて引っ張りあげてまっすぐ私を見た。

松田氏は羊君のことを知っている。
うちに転がり込んできた時に既に言ってある。

そういう人がいるので、帰ってきたら出て行ってね。そしてなんかしたらぶっ飛ばすと。

で、5年連絡がないことも知っている。それを聞いても松田氏は特段何かを口にするでもなく、すんなりと事実として受け入れてくれた。

『ま、そういう時もありますよね。時間が解決してくれますよ。無理矢理なんかしようとか思わなくていいと思いますよ。それに、すぐ忘れますってそんな奴のこと』

と、温い着地を決め、私はほっこりしていた。

だが、今までのらりくらりとしてきたけれど、解決には至っていない。

「でね」

「はい」

「きれいに忘れる為にね、会ってくる」

「は?! いやだってどこにいるかも分からないって言ってませんでした?」

そりゃそうなる。だって、連絡すらなくて、どこにいるのかすら分からない人に会うなんて、どうかしてると思ってるんだろう。

しかしだ、私の『感』には自信がある。
近いうちに会える気がする。なぜかと言われたらそれは分からないけれど、こうなんてーの、野生の感てやつだ。

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