帰ってきたライオン
すっぱり明けて朝の8時。
部屋の中は相変わらず寒いがこたつの中は暖かい。
そしてカウントダウンからだらだらとして気の向くままに寝たりして、二人して起きたのはこんな時間だ。
テレビでは変わらず年末年始の特別番組か駄々流れになっていて、眠い目をこすって、
「明けましておめでとうございます」
と、挨拶を交わした。
背伸びをしながらあくびをした。
カーテン閉めたままなので外の様子は分からないが、隙間から入り込んでくる光で晴天だということが予測できる。
「松田氏、今年もよろしく」
「こちらこそ、これからもよろしくお願いします」
いつの間にか風邪も昨年に置き去りにして、清々しく元旦を迎えた。
交互にシャワーを浴びて身支度を整え、薄く化粧も施し、綺麗な服に着替えた。
その間に松田氏は御節にお雑煮の準備をし、こたつの上を拭き、食事の用意をしている。鼻歌を歌いながら台所に立ち、楽しそうに料理をしているそれを鏡越しに見ながら髪をとかす。
軽く御節を頂いたら初詣に行こうという話になった。
お昼にもなれば人も少なくなってるだろう。
夜中から神社に並んでる人波もその頃にははけ、ゆったりとまではいかなくてもふつうにお参りができると思う。
甘酒をもう一杯飲んで、今年の抱負を言い合った。
の前に、
「松田氏、まずは部屋に行こう」
「えーと、唐突すぎて意図が掴めないんですけど」
「だから、松田氏の部屋に行って、おばけ、去ってもらおうよ」
「やです」
きっぱりきた。
間髪入れずにズドンときた。でもね、
「新年だよ! 新しい気持ちになろ! 私が先に入ってあげるから」
そんな新年一発目から嫌なことしたくないですよ。また何が楽しくて新年からあの部屋にともんくを言い張る松田氏に、今やってすっきりしてお参りに行ったほうが、全てきれいになくなるじゃん!
私はあいつを、松田氏は部屋にいるあいつを。
お互いの『あいつ』を手放そうよ。
と、無理矢理かこつけてその気にさせた。