帰ってきたライオン
それから私たちは手あたり次第に懐かしいものを買い、例えばそれはイカ焼きだったり、たこ焼きだったり、お好み焼きだったり、ジャガバタだったり、食べたいものを食べたいように食べまくった。
一つを買って二人で半分こにして食べた。
だから、けっこうたくさんのものが食べられたとも言う。
ジュースも半分こ。
なんだろ、こういうことが普通にできる。
居心地もすごくいい。
松田氏もそんなことを言っていたので、これってお互いに居心地よくないとできるもんじゃない。
お賽銭も入れて、ぱんぱんして、新年の抱負とあいさつもした。
「そろそろ帰ろっか。寒くなってきたしさ」
「そうですね、あ、甘酒ありますよ」
「飲むに決まってんじゃん」
「言うと思いました。俺も飲んでこ」
「そうしよ」
少々熱めの甘酒をふーふーしながら飲む。これはもう一人一つって決まってる。
神社を出たところで立ち止まって人間ウォッチングしながら飲み干し、心も体も温めてから「帰ろ」どちらからともなく言って、仲良く並んで歩き出した。
自宅へ戻ったら先ほどの怖さは薄れていた。温かみのほうが増していて、温かさは万能薬だ。
どんな薬よりも効く。
お風呂にも入り、熱めの茶をすすりみかんを食べてテレビを見て笑う。
それぞれの半纏を羽織って胸のところで蝶々結びにして、ほっこりした空気の中時計を見た。
23時過ぎたところ。
今日は朝からいろいろとあったので精神的にもつかれているのかもう眠い。
でも、私の陣地、寒いんだよな。しかもドアのところだし、そう思うとなんだか怖い気もする。
「ちょっと成田さんこたつ出てください」
「寒いよ」
「一瞬だから」
ぶーぶー文句を言いながらも言う通りに出る。松田氏は何も言わず私の陣地に来て布団をすいと持ち上げた。
私の布団をいずこへ。
何食わぬ顔で自分の借地へ私の布団を置き、こたつを私の陣地側へずいと押した。
そしてからの、布団を敷き、半分は私の陣地、半分は松田氏の借地側にお邪魔している私の愛しの布団。
「今日からこうして寝ませんか」
「……」
「いや違うんです。そうじゃないんです。あのー……、こ、怖いから、ほら、部屋のこともあったしだから、ぜひともお願いしますー」
図体に似合わず泣きそうな顔をして拝む松田氏の手を「やめろ」とほどく。
私も怖いと思っていたのでちょうどよかった。ってか嬉しい申し出。だけど、
「仕方ないなあ、いいよ」と言ってみた。
「ありがとうございます」と拝むからまたも「やめれや」と手を払う。
「私も怖かったし。でも、なんかしたら……」
「「ぶっとばす」」
重なった声に爆笑し、「おやすみー」と言いながら布団に入った。
お互いに顔を見合って笑っていて、なんか合宿みたいだなって話し合った。
こんな日がずっと続けばいいなって思ってた。