帰ってきたライオン
毎日14時半きっかりに東南アジア方面から送られてくる発注書をプリントアウトし、まとめて上田さんに渡した。
休み明けはめちゃめちゃ忙しい。
ぶっちゃけひっくるめて簡単に言うと、
海外に本や子供向けのおもちゃなどを輸出入するのがその仕事。
しかしながら国によっては送れない内容の書籍やそれに付随するおまけ、おもちゃなんかもあって、けっこうチェックが面倒くさかったりもする。
土日に溜まった発注書をやっつけるのにかかる時間……
エンドレス。
今日は22時には帰れるだろうか。
これはこの後の上田さんの仕事っぷりにかかっている。
「なんか今日めっちゃ多いじゃないですかぁ。こういう時に限って多いんですよねえ、ほんとありえません。おもちゃわ買うなって言いたいです」
「文句言うならその時間で一件入力! おもちゃを買ってくれる人がいるから私達のお給料がでるんだよ」
「もー」
「もーじゃない! 働く!」
「ふぇーぃ」
「じゃ、私はかなり遅めのランチに行ってくるから」
「はーい。早く帰ってきてくださーい。行ってらっしゃい」
朝9時に会社へ来て、15時半にランチ。
もうだいたいランチタイムなんて終わってるんだよねこの時間。
うちの会社は駅直結のビルの中の32階。
夏は暑く冬は寒い。
ビューだけはいいけど、残業中に窓から花火が見えても虚しくなるだけだ。
だから、私はここから見える夏の花火が大嫌いだ。
でも、たった一度だけよかったなって思ったことがある。
入社してすぐの頃、当時の彼と窓の外から花火を見た。
お互い残業で、ドンと鳴った音にびっくりして窓際まで走ってきたら眼下にきれいな花火が上がっていた。
花火って上から見てもまーるく見えるんだね!
なんて話をしたのを覚えている。
でもそんな彼は今はもうここにはいない。