帰ってきたライオン
午後六時を回った頃に二人は仲良く談笑なぞしながら帰ってきた。
「案外たくさんあって迷った迷った、とりあえずザックとウエアーと靴買ったんだけど、あれ、バカにできないよ。ちょー暖かいし汗も一瞬で外に出すみたいだし、高機能。なんせね、靴よ、歩きやすいし疲れにくいの。これ、普通に着ててもお洒落だし、俺、はまるかも」
「羊さん優柔不断で困りましたよ。あっちこっち行ったり来たりで、隣の店と行き来してなかなか決められずにいて、最後なんて結局二つ買ってるんですよ。だったら最初から買ってくださいよってかんじで……て、成田さん? 難しい顔してますけど、なんかありました?」
「あった」
「なにがあったんだよ、ん、なにそれ、それなんの箱」
「これ、羊君宛てに来たみたい」
「俺に? 誰から?」
「書いてない」
両手に持ってた紙袋をその辺に放り、それを松田氏が拾って部屋に入り、羊君の陣地の端っこにそっと置いた。
羊君は白い袋に入った箱を上下左右に雑に振り、全体を確認して、英語表記の自分の名前と、そこに差出人の名前が無いのを確認すると、ちっと小さく舌打ちをした。
まるで強姦魔のように雑に袋を破き捨てる。
それを松田氏が拾い集める。
箱をじっと見て、中を丁寧に開けた。
「あっ」
小さく声を発し、止まった時間。
松田氏と私は顔を見合わせて羊君の次のことばを待っている。
「あーと、なんだ、その、えーと……見たい?」
見たい? ですと?
見たいにきまってるじゃないか。
いちいち聞くところも昔と変わっていない。
この逆なでするやりかた、ぜんぜん変わってない。
「見たい」という。と、
「えー」と返された。
えーと言うなら最初から言わなければいい。
昔からそうだ。一応聞くけど、こういう聞き方の時っていうのは大いに見せたくないときだ。
そして結局この流れからすると見せないの方向に90パーセントの確立で動く。
「てかまず先にほらあれだ、腹減ったし飯にしない? な、な、そうしようそうしよう」
来た。
やっぱ私の感は大きいことにも小さいことにもあたる。
この場合は経験からくるものなのかもしれないけど、いつも通りに見せなくてもいいっていう雰囲気に持ってこうとしてる。
けど、今回はそういうふうにはいかない。