帰ってきたライオン

頭を振りつつもしかしながら欠かさずしていることもある。

そう、例えばこれだ。

毎年11月の終わりになると七色のクリスタルに色づく街路樹のイルミネーション。

私の住んでいるアパートの前の商店街にもそれは灯り、下町な雰囲気が癒しを流している。それぞれの商店がそれぞれ思いのままに飾るので、統一感はまったくない。

魚屋の屋根にもやっすい激安ショップで買ったようなイルミネーションをガムテープでくっつけ、そこだけなぜか異次元空間のようになっている。

私たちはこの魚屋のイルミネーションを見るのが好きだった。

笑い合った。

おかしいよねって、写真に撮ってアパートで見直して缶ビール飲みながら笑顔になった。


だから、


「よっこら……」


カシャッ。


と、写真を撮って、羊君に送った。



もう見てないかもしれない。だって返信すらないから。
もしかしたら迷惑メール扱いでゴミ箱に直行かもしれない。
でも、なんかもうずっとこれやってるから、自然とそんな行動をおこしてしまう。



「なにやってんだか」



メールを送ったあと、ふと見上げた空は濃紺で、きっとこの空を繋いでいけば羊君に会えると思う。

なんてことを考えてるくらいだから、
ぜんぜん未練たらたらなわけで。



「会いたい」



本心から、強がり抜きでそう思った。


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