帰ってきたライオン

「それじゃ、どんな関係なのかお話して頂きましょうか。ちょっとお茶沸かしますから、お二人はこたつに入ってくつろいでいてください」

くつろげるか。
これでくつろげるやつは相当なもんだよ松田氏。
こんな状況でくつろげる心の持ち主なんて……

「あ、俺コーヒーでよろしく」

いた。目の前にくつろいでるやつがいた。
しかも話題の張本人が、こたつでぬくぬくとくつろぎはじめやがっている。

腹を括ったのかさっさとこたつに入りテレビをつけてみかんに手を伸ばした輩が若干一名目の前にいる。

今から磔のようにされるってーのに暢気なもんで、写真立てはさっさと箱に戻して壁の方に押しやっていた。

この図太さが海外で通用するあれなんだろうか。
繊細さのかけらも見当たらない。

見当たるのは、図太さと図太さと図太さと、MAX図太さと、図々しさに自己中スーパーマックスってところだ。

それでもちゃんと他人を少しは考えることができる。

そんなところがあるからまだやっていけているわけで、そこがなくてただ単に自己中の塊で冷たい人間だったらとっくの昔に終わってる。


適当を絵に描いたような人なんだけど、

例えばサバンナで暮らす動物特集で、ヌーの親子が川を渡っているときに忍び寄ってきたワニがヌーのこどもの足を噛んで川に引き込もうとしている画を見た瞬間、

『残酷だ! 訴えてやる! どこの局だこのやろう!』と、クレームの電話を入れようとしたり、

バラエティー番組で素人が賞金稼ぎに一発芸を披露しているときなんか、

『よしよしよしよし、うけてないけどよく頑張った、空気読んでないけどそれでいい。百パーうけてないけどお前はよくやった』

だのと、親心な目線になって涙を浮かべている。

はたまたマラソン大会で学生が一生懸命走っているのを見て、これがまた後ろのナレーターが涙を誘うようなことをちょいちょい入れてくるのも関係してるんだけど、ティッシュが手放せない状態になる。

そんなピュアなところもあるので、やってることはふざけんなこのやろう的なことなんだけど、何故か憎めない得な性格の持ち主だ。

そしてどんなことも後にはひかないという羨ましい性格。
今日のことは今日終わらせる。


羊君はそんな人間だ。

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