帰ってきたライオン

メールの差出人がグリーンさんからということにまず驚いた。
なぜ私のメアドを知っているのか、そこが解せぬところ。

「グリーンさんが羊さんのパソコンを見たとかじゃないですかね。それか、グリーンさんのパソコンを羊さんが使っていて、こっち帰ってくるのに情報消さずに帰ってきたとか」

「でもそれでなぜ私?」

「確か、毎年花火の写真送りつけてるって言ってませんでした?」

「こどはことば。送りつけたんじゃなくて、親切に送ってたの」

しかも、メアドは私の名前と誕生日を組み合わせたもの。

もし羊君がグリーンさんに私のことを話していたら、名前くらいは覚えているだろうし、メアド見てmioほにゃららと並んでいたら誰でもこれが私のアドレスだろうと想像がつく。

で、中身はというと……



【Mioさん

こんにちは、いきなりのメールでびっくりしていると思います。私はグリーン ホワイトウッドと申します。オーストラリアではタイガーにはとてもお世話になって……】

「ちょい待ち、なんかすごい違和感」

「言いたいことはよく分かります。つまりたぶん羊さんのことじゃないでしょうか」

「いやいやだって、羊君て、虎野……」

「羊ですけど、シープって呼ばれるの嫌だったんじゃないですか? 彼のことなので。で、虎野だからタイガーとかカッコいいって思ったとか、まあ、そんなところじゃないのかと」

「……わー……痛い。なんか鳥肌でぜんぜんしっくりこないけどひとまず受け入れるわ。次お願い」


「……はい」




【オーストラリアでタイガーにはとてもお世話になりました。
私には娘が一人います。
名前はサマンサです。

もちろんタイガーのこどもじゃありません。
タイガーが来たときにはもう私のお腹の中にいました。いろいろあって一人で育てています。

五年間、いつも一緒にいました。私の実家で一緒に生活し、サマンサとも本当の家族のように接してくれました。
娘もdaddyと言い、本当の父親のように思っていました。

三人で旅行もしました。
三人でいろいろなイベントにも参加しました。
私の両親もタイガーのことをとても信頼し、あんなにいい男の人はいないと言っています。

それがいきなり日本へ帰ると言い出し、なんの説明もなくあっという間に帰ってしまいました。

正直何があったのか分かりません。
私は何か彼にとってよくないことをしたのでしょうか。
考えても分かりません。連絡をしても全く返信はないんです。

そこで、タイガーが残していったパソコンのメールや写真を見て、あなたにたどり着きました。
mioさんのことは詳しく聞いています。
だから、行くとしたら絶対にあなたのところだと思いました。

住所も電話番号も知っています。そろそろ贈り物が届く頃だと思います。

友人が日本に遊びに行くと言っていたので頼みました。
届きましたか?

会ってお話をしたいのですが、行くことができないのでメールで。
また連絡します。
               グリーン】

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