彼の襟元にキスマーク。
彼の作戦
あぁ、もうボロボロだ。
体も、心も。
二十五歳を超えたあたりから、疲れが翌日に繰り越すようになった。
二十六歳になると、ファンデーションが上手くのらない日が多くなった。
そして二十七歳になった今は、華の金曜だというのに飲み会へ行くことすら億劫になった。
パソコンの電源は落としたものの、まだ椅子からは立ち上がれずにいた。
午後九時のオフィスに人影は無く、窓の外は空の黒とビルの人工的な照明が広がっている。
「はぁ……。」
帰ることすら面倒だ。力が出ない。立ち上がることすら億劫。
思わず出たため息は、冷たいオフィスに消えた。
いつまでもここにいるわけにはいかない、といい加減思ったところで、不意に扉が開いた。
静まった空間に音をたてて入ってくる人影。
それに驚き、デスクへ突っ伏していた体を起こす。
そこに現れたのは、真っ黒なショートヘアをした青年だ。
「あれ、まだいたんスか。」
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