遊園地
「ありがとう。」
「最初で最後!」
そう言って俺の胸に
財布を押し付けると
ニッと笑って
手を握ってくれた。
突然だったから
声も出なかった。
嬉しいのに
握り返すこともできない。
ただただ
俺の手を握りぐいぐいと進む菜緒を
見つめているだけ。
「菜緒!」
菜緒はくるりと振り返り
俺の顔をズイッと見上げた。
「終電が間近なの。」
俺はただ
黙ってうなずく。
「よしっ」
と言ってまた前を向き
一歩踏み出そうとして
またこっちを向き直した。
「もしかして…いや?」
握った手を顔の前に上げ
子犬のような顔で問いかける。
まさか!嫌なわけがない。
俺はギュゥっと菜緒の手を握り返す。
「一緒に帰ろう。」
にこりと笑った菜緒をまた
遊園地のイルミネーションたちが照らす。
歩き出した菜緒に
その小さな背中に
俺は決意した。