~Special Short Story~



『次は大学前~』


もう着いちゃった。今日は弥生にお土産話持っていけないななんて思いながら、鞄を膝の上に移動させる。


バスが停車すると、腰を上げて定期をかざしてバスを降りた。でも、やっぱり何かが物足りなくて、バス停から2、3歩進んでから、ゆっくりと後ろを振り返ってみた。


「あっ……!」


ブレザー姿の男の子が私の方に歩み寄ってくる。その彼はもちろん、星村くん。でも、その顔にはいくつかの傷あとがあった。


「あの、その傷……」


「これ、どうぞ」


私の質問を遮って、昨日と同じように封筒を差し出した星村くんは、私が受け取るといつものように走り出そうとした。


「ま、待って!」


呼び止めた私は、鞄の中をあさってある物を取り出した。


「よかったら、これ使って」


差し出したのは、パステル系の小さな花柄がプリントされた3枚の絆創膏。最近、弥生がくれたのを思い出したんだ。


星村くんはキョトンとして絆創膏を見つめる。あ、やっぱりこのデザインは男子にあげるもんじゃないか。



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