恐怖日記
―――すぐ目の前、目と鼻の先には微笑む白い服の少女がいた。
僕は違和感を感じぬまま、そのままその少女を見つめていたのを覚えている。

―――その後はどうしたのか、忘れてしまった。
なにせ十年前、それも僕がまだ、幼い頃の話だから、無理がないだろう。

―――だが、後に思い出したことがある。

祖父のマンションは八階だった。
どうやっても、そこから僕の目の前にいることなんて、不可能のはずだった。

今でも、あの子の姿を思い出す。
宙に浮かんでコチラを見て、微笑む少女―――。

と、言っても、幼稚園の頃の話だから。
僕はそれを夢だと思っていて、既に記憶から完璧に消えていた。

―――あの話を聞くまではだったが。

あれは小学六年になったときの話だった。

「Kがさ、親父の家で白い服を着た女を見るって言うんだよ」

父がそんな事を母と会話をしていたのを覚えている。
Kと言うのは、父の弟で僕の叔父にあたる人だ。
そのKと言う人は、どうやら霊感が強く、よく霊を見るとよく言われている。

「嘘~、やめてよ」

母は笑いながら、そう言っていたのを覚えている。
その時だった・・・僕の脳裏にあの、白い服の少女を思い出した―――

白い女。
 ベランダの少女―――。

そのとき、幼い頃の祖父の家での体験が、一気にフラッシュバックした。

―――白い服を着た少女が、コチラを見て微笑む。
 ―――しかも八階から・・・宙に浮かびながら―――微笑む少女を―――
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