放課後は図書室で甘い時間を


改札を抜けてすぐ、先生は私の手を繋ぐ。

…今度の私は、何も言わない。

あの真剣な顔を見ちゃ、手を繋いだ方がいいかもしれないって思う。

あと、手繋ぎたいって少しは思ってるし…。


「桜ちゃん、家はどこ?」

「あー、そこ右ですよ。」


道を教えながら、私達は歩く。

十字路につけば、もう簡単。
すぐ家に着くし。一軒家だから目立つし。


すると、いきなり先生は歩くスピードを速めた。


「桜ちゃん…ここから、家見える?」

「え?!…あ、えと、あの青い屋根の…」

「あー、あの大きな家か。分かった。
……ちょっと、行き方変えるね。」


先生はそう言うと、私の家からどんどん
遠ざかる方の道へ歩く。

……遠回りしようとしてるんだ…。

…でも、いきなり何で…?


「先生、あのっ…」

「しっ!!…大丈夫。俺についてきて。
絶対、手離さないでね。」


先生、いきなりどうしたんだろ…。
冷静なんだけど…ちょっと…何て言うか…焦ってる?…急いでる?

…よく分かんないけど、そんな風に見える。

遠回りする理由。手を絶対に離すなって言った理由。

…分からない。
けど、きっと何かがあるんだ。

そうじゃなきゃ、こんなことしない。



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