Y.T (忘れられない人)

方向音痴で他の道に行けば、

必ず迷ってしまうわたしは、

入学式当日、

母と一緒に確認して歩いた道を、

ひたすらひとりで辿って歩いていた。

できれば、前の集団を追い越したい。

けれど、なぜだかとんでもなく怖い。



その中に、ひとり、

とても輝いて見えるひとがいる。

そして何故だか大きく見える。

ほかの3人より身長は低いのに。



5メートルぐらい近付いた時、

そのひとがこちらをチラッと見た。

その途端、跳ね上がる心臓。

早鐘を打つ心音。

皮膚表面に一気に集まる熱。

全身真っ赤になっているであろうわたし。

恥ずかしさのあまり、

俯いて、

走ってその集団を追い越した。
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