Y.T (忘れられない人)

「なに?その走り方。ダメじゃん。」

聞こえてきた声に、

ムッとして振り返れば、

陸上部のユニフォームを着たあのひとが居た。

カァーっとして真っ赤になった恥ずかしさより、

何故だかとても腹が立ったわたしは、

怖いのも忘れて睨みつけた。

のに、ゆったりと微笑むこの男子。



「やめてくれない。わたしの後輩にケチつけないで。

 休んでばかりいるあんたに、指導してほしくもないし。」



3年女子の先輩が間に入ってくれて、

なんとかその場は収まったものの。

次の日から、ちょくちょくあのひとは部活に来た。
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