ココロトタマシイ
第1幕

巡る感情-美麗Side-

いつからだっただろうか。







人の感情が分かるようになったのは……。







多分、物心ついた時からずっと。


きっかけは、小学3年生の時。

『ゆみちゃん、なんでないてるの?』

『え…ないてないよ……?』

『うそ。ないてるよ』

『!!』


顔は泣いていなかった。

泣くどころかニコニコ笑っていて。

特にいつもと変わった様子はなかった。


けど……。


心が、


心が泣いていた…。


“ゆみちゃん”をまとう空気が、何だか重々しくて。

深い青色が見えた。

その子に触れると、その子に重なってに円が見えた。

その円はそれぞれが区切られていて。

一番多いのは、“ゆみちゃん”をまとっている深い青。

その隣に黄色、赤、ピンクの順で並んでいて。

なぜか咄嗟に、黄色が増えればいいと思った。


青はきっと、悲しみ。

黄色は楽しいという気持ち。


そう、思ったから。

今思うと、そんなこと思っちゃいけなかったんだ。

私が余計なこと思ったせいで。

ゆみちゃんは………。





何をしても《楽しい》という感情しかもてなくなってしまった。





普通に遊んで楽しいと思うならいい。

勉強を楽しいと思うならいい。

それだけならよかった。

……けど。

あの子は、人の泣く姿を見るのが楽しいと思うようになってしまった。


友達をいじめたり。

教室でみんなで飼っていたハムスターを殺したり。



……私が小学5年の春にはもう、“ゆみちゃん”の姿はなかった。

噂によると、精神病院に入れられたらしい…。



ごめんなさい。

ごめんなさい。

私のせいで……。



私はその時決めた。

もう、他人の感情を見ても見てみぬフリをしよう、と。


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