ココロトタマシイ
「久々にとばすぜ……」
「え…ちょっ、待っ…!!」
身の危険を感じた私は、抗議の声を上げ…。
「しっかり掴まってろよー」
かけたところで、呑気なお兄ちゃんの声に掻き消された。
そしてブルンといいながら、勢いよく大量の排気ガスを出してバイクは走りだした。
…猛スピードで。
「お願いだから安全運転にしてーっっ!!」
私の叫び声も虚しく。
高速道路でも絶対に捕まるんじゃないかという速さは、衰えることはなかった。
*****
『…分発……行き、ま…なく発……致します』
淡々とした口調のアナウンスに重い瞼を上げると。
いつの間にか私が降りる終点の駅に着いていた。
辺りを見れば乗ったときよりも確実に人が少ない。
『……行き、ドアが閉まります』
聞こえてくるのは真逆の方向への駅名。
やばい!
寝ちゃったんだ!!
目の前のドアはプシューという音をたてて閉まりかけていて。
「お、降ります!!」
思わず叫びながら慌ててドアをかいくぐった。
何とか降りることに成功して、ほっと息を吐いた。
しかしそれもつかの間、慌てて時計を見ると、ちょうど学校方面の電車が発車してしまっている時刻。
「あー…もう、最悪……」
私は盛大なため息をつきながら、重い足取りでとぼとぼとホームヘ向かった。
ホームで再び時間を確認すると、次の電車が来るまであと20分。
学校まではどんなに頑張って走っても最短15分。
この時間にバスはないし…。
このままだと確実に遅刻だ。
「はあ……」
私は再び大きなため息をついた。
せっかく当番を全部代わって送ってもらったのに。
これじゃあ働き損。
今日はついてない。
今日の占い、天秤座1位だったのに。
そんなことを考えながら、ホームの椅子に座っていると。
だんだん瞼が重くなってきて。
頭がふわふわする。
なんだか今日はよく眠くなるな……。
次まで20分あるし、少しなら…。
ぼんやりと思いながら私は流れにまかせて瞳を閉じた。