ココロトタマシイ
“見ても見てみぬフリをしよう。”

そう決めてから、6年が経った。

そして私は、高校2年生という青春真っ盛りな時期を過ごしている。

今ではもう、望まなければ他人の感情は見えない。

多分、コントロールが出来るようになったんだろう。

でも他人にぶつかったり、触れたりするとやはり見えてしまう。

円だけではなく声も聞こえるようになってしまった…。


でも触れなきゃいいんだから昔よりは大分ラクになった。

勝手に見えるのは正直ツラいから……。



「みーれいっ★」


「わっ…!」


背後からいきなり抱きつかれて、勢いよく後ろを振り向くと。

相変わらずニコニコした大切な友達の姿。


「芽依(めい)……」


「どーしたのよ、美麗(みれい)さっきからぽーっとしちゃってさ」


「何、その“ぽー”って」


小首を傾げる芽依に、苦笑混じりに軽くデコピンを与えてやる。

すると私から離れて。


「そのまんまの意味よ」


と言いながら小突かれた。


たわいのない、いつものやり取り。

この後お互いに笑いあいながら帰って、たまに寄り道して。

そんな、去年から続く日常。




「あっ!南(みなみ)くんだ」


校門を出たところでふいに芽依が声を上げた。

彼女に連なって、視線の先を辿れば。

確かに少し先を歩く、南くんの姿があった。


「…あの人、何組だっけ?」


「えーっと…確か………ほら、あれよ。7組!」


いかにも頭の上に電球が浮かんでます状態で、両手を合わせる芽依。

私はそんな彼女に相づちを打って、カバンをかけ直しながら。

彼に意識を集中させる。


……………。

………は……がっ………か?


微かに聞こえる、途切れ途切れの掠れた声。

放映終了したテレビみたいな、ノイズっぽいザラザラした灰色。

見えるのは。


「………今日も同じ」


「またテレビっぽい感じ?」


「うん……」


何回見ても、いつ見ても同じ。


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