ココロトタマシイ
僕に凪ぎ払われたヤツは、仰向けに倒れて微動だにしない。


「魂奪うんじゃなかったのかよ…。
あんた、弱すぎ」


軽くため息をつくと、僕たちを囲むように集まってきた奴等に言う。


「次は誰が相手してくれるの?」


全員が一瞬躊躇ったけど、一斉に僕に飛びかかってきた。

相手の攻撃を避けつつ、次々にくる敵を凪ぎ払う。

何度もこれの繰り返しだった。


「きゃあっ」


………この、人騒がせな悲鳴が聞こえるまでは…。

声のする方を見てみれば、案の定彼女が捕まっていた。

それも最初に倒したはずの男子生徒に。

くそっ…倒れたフリだったのか……。


「あんた、なにやってんだよ!!
僕の後ろにいろって言っただろう?!」


「ご、ごめん……。
でも!横から狙ってる人がいたから……――」


つい…と口ごもる彼女に呆れてものが言えない。

僕が狙われてるのなんて放っておけばいいのに。

おせっかいなやつ…。


「この女の魂、もらう」


「それは僕のだ。お前には渡さない」


「ちょ、ちょっと!私の魂は私のものでしょ?!」


「………とりあえず、そいつを離してもらおうか」


なんか言ってるのは放っておいて、相手を睨み付ける。

すると、どこから取り出したのかカッターを彼女の首もとに突き付けた。

そして、ニヤリと嫌な笑いを浮かべる。


「…一体何の真似?」


「お前、武器を捨てろ。さもないと、この女殺す」


だいぶ、ふざけたことを言ってるこいつを。

思いっきり蹴っ飛ばしてやりたい気持ちはやまやまだけど。

彼女を殺されるのは困る。


「ちっ………姑息なやつだな」


文句を言いながらも鎌を奴の前に投げると。

奴は満足そうに微笑んだ。


「言う通りにしたんだから、早く離せよ」


武器を捨ててやったのに、一向に離す気配のないこいつを睨み付けると。


「それはできない」


またもやふざけたことを言い出す始末。


< 21 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop