ココロトタマシイ
「………別にそれは構わないけど……」


「え…?」


多少目を見開きながらも、あっさりと承諾されたことに驚いて。

随分まぬけな声を出してしまった。


「もう8時ちょっと過ぎだぜ?
いくら日が延びたからってあんまり遅くなると危ないんじゃ……――」


「それなら全然大丈夫です!!
友達の家に泊まるって言えば!」


「そ、そうか…なら急ぐぞ!」


「はいっ!」


早速走り出した彼の後をついていきながら。

ふと空を見ると、確かにもう辺りは暗くなってきていて。

さっきの学校では全然明るかったのに……。

そんなことを考えながら走っていた。


そして、病院に着く頃にはもうすっかり真っ暗で。

私は彼にことわってからお兄ちゃんに電話をいれた。



**********************


なんとか電話が終わって、彼のいる方に戻ると。

椅子に座っていた彼が立ち上がって、笑顔を向けた。


「電話、どうだった?」


「あ、大丈夫でした。
ちょっと怒られましたけど……」


苦笑混じりに答えると、そうか、とくしゃくしゃと頭を撫でられた。

…どうして、この人の手はこんなにも安心できるんだろう…――。

お兄ちゃんに似ているから……?

少し落ち着いたら、ふとさっきの傷だらけな南くんの姿が浮かんだ。


「あのっ…それより南くんは……。
南くんは大丈夫なんですか?!」


「あ、ああ……。
傷を見て医者がだいぶ驚いてたけどな。命に別状はないみたいだ」


「そう、ですか」


よかったぁ………。

ほっと息をつくと、彼は優しく微笑んで、椅子に腰掛けた。

となりに私も一緒に腰掛ける。


「……ありがとうございました。
えっと……」


「あ?ああ…俺は北川健次。嬢ちゃんは?」


「妃美麗です」


「ミレイちゃんか……。珍しい名前だな」


「よく言われます」


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