ココロトタマシイ
「…………」


「…………」


彼女はそれっきり言葉をつぐんでしまった。

……確かに彼女の言う通り。

さっきからずっと傷が痛む。

熱く、脈打つように特に脇腹が一番ひどい。

これでも悟られないように、顔色ひとつ変えてないつもりだけど…。


「ねぇ……いつまで黙ってるつもり?」


「……信じてもらえるか分からない」


「それ、さっきも聞いた。
それに…信じるか信じないかは僕が決める」


「…………」


また沈黙。

さすがにいい加減苛ついてくる。


もう帰ってもらおうか…。

前髪を掻き上げて、ため息をつきながら口を開いたとき。


「私、人の気持ちが分かるの」


「…………」


「南くんの痛みが、伝わってくるの」


気持ちが……分かる………?

…こいつも能力者か。


僕と同じ……――。

いや、違うか。


元からある能力(チカラ)とそうじゃない能力(チカラ)。

この差は小さいようで大きい。


「信じてもらえない、よね?」


「…信じるよ」


「え……?」


「だから、信じるって言ったんだよ」


「なん、で…?」


信じるっていうのは、そんなに驚くことなのか?

今までにいろんな能力者を見てきた僕にしてみればごく普通のことだけど。

彼女にとってはそうじゃないらしい。


でもまぁ…。

普通の奴に言ってもなかなか信じるわけないか……。


「南くん……?」


「あ、ああ。
ごめん」


いつまでも黙りこくっていた僕の顔を心配そうに覗きこむ彼女。


さっきからこんな顔しか見てないような気がする…。

………で。

結局こいつは何を話したいんだ?

能力のことを言いたかっただけのようには見えないけど。


< 33 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop