ココロトタマシイ
僕に自分の能力のことを話した以上、僕のことも話さないだろうし……。


「……いいよ」


「じゃあ1年待ってくれるのね!」


「ああ」


「よかった!」


難なく承諾すると、彼女は満面の笑みを浮かべた。


…やっぱり似てる。

笑ったときに首を少し傾げて、少し頬が赤くなるのも。

色素の薄い髪の色も。

由希にそっくりだ……。

他人の空似ってやつだろうけど、少し胸がざわつく。

それから逃れたくて、僕は窓の方に顔を逃がした。


「話ってそれだけ?」


「う、うん」


「なら悪いけど…もう帰ってくれる?」


彼女と話した中で、一番冷たい声。

僕は窓の方を向いていたから、彼女の表情は分からなかったけど。


「うん……。
ほんと、ごめんね。
ありがとう」


そう言った彼女の声は、泣くのを必死に堪えているような。

哀しみを帯びている気がした。


横目で彼女を見やると、ドアに手をかけてまさに出ようとするところで。

後ろ姿も悲しげに見えた。




**********************

彼女が出て行ってからしばらくして、静かな病室にドアを叩く音が響いた。

やっと来たか…。

僕は寝ていた体を起き上がらせると、ドアが開くのを待つ。

音もなく静かに開いた扉の向こうには。

    ・
予想通り彼が立っていた。


…やっぱり、思った通りだ。


「来ると思ったよ、先生?」


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