ココロトタマシイ
「ふぅん…俺の正体が分かっていたみたいだね」


「まぁね。
健次の反応を見れば一目瞭然」


「へぇ…前に会った時よりは力がついたみたいだな」


「……あんたもね」


お互い不敵な笑みを浮かべながらの会話。

見た目では余裕を装ってるけど。

…正直圧倒される。

前も思ったけど、僕より遥かに上回った強さを感じる。

何て言うか…彼を纏う雰囲気……オーラが、他とは圧倒的に違う。


「そんなに睨むなよ、何もしやしないからさ」


別に睨んでるつもりはなかったんだけど…。

彼は苦笑いを浮かべながら両手を挙げた。


「…それよりさ、その変装解いたら?」


僕の言葉に彼は一瞬きょとんとした顔をしたが。

何も言わずに顔の端をつまんだ。

そして一気に引っ張る。

バリッ




まるでダンボールが破けたような音がして。

マスクの下から素顔が現れた。

素顔の彼は、前と全く変わっていない。

すっと通った鼻筋に、整った顔立ち。

少し長い黒髪に。

左目を覆い隠すほどの長い前髪。

唯一見える右目は、何でも見透かすようなグレー。

前に会ったときから4、5年は経っているはずなのに。

全く歳をとっているようにみえない。


「ふぅ…暑かった。結構蒸すんだよな、これ」


「あ、そ」


当の本人は、僕がそんなことを考えているのも気付かず。

いや…正確には“気付かないフリをして”。

剥がしたマスクで自身を扇いでいる。


「ところでさ、あんた僕に何の用?
ただのお見舞いって訳じゃないんだろう?」


挑戦的に問えば、彼は口の両端を上げて。

ベッドに片手を乗せて前のめりになると、僕の目の前にすっと指を出した。


「忠告に来てやったんだよ」


「忠告?」


一体何の…。

首を傾げながら怪訝そうな目をむけると、彼は「あぁ」と頷いた。

そしてそのまま続ける。


「お前、死ぬよ」


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