ココロトタマシイ
「普通は、だろ?
あいにく僕は普通じゃないんでね。
それに………」
魂を回収して、本来生きるべき人の人生を強制的に終わらせてしまっている僕に、生きる資格なんてないだろうし…。
そう考えると、思わず自嘲気味な笑みがこぼれる。
「…それに?」
急に黙り込んだ僕を、彼は挑戦的な笑みを浮かべながら覗き込む。
どうせこいつのことだ。
言わなくても分かってるだろうに。
それでも、あえて問うのは、僕に言わせたいのか何なのか…。
……絶対言うもんか。
そうは思っても、その吸い込まれそうなグレーの瞳と目が合うと、つい口が滑りそうになる。
それをぐっと抑えて、顔ごと視線から逃れる。
「別に…何でもないよ」
「ふぅん…」
彼は面白くないとでも言いたそうに両手を頭の後ろで組むと、僕に背を向ける。
そして、そのまま病室の扉に手をかけた。
「じゃ、言いたいことも言ったし、俺帰るわ」
「あぁ、ご忠告どうも」
余計なお世話だったと嫌味っぽく言ったつもりだけど、そんなのもろともせず彼は優しげに微笑んだ。
「どういたしまして。
ま、せいぜい早死にしないように気をつけなよ」
「……気が向いたらね」
その優しげな表情に少し驚きながらも、薄笑いを浮かべて答えると、彼は苦笑して部屋を出て行った。
完全に扉がが閉まってしばらくすると、病室は再び静寂に包まれた。
ふと窓の外を眺めれば、雲一つない夜空に少し欠けた満月。
・・・
あぁ、あの時もこんな夜だった。
そっと目を閉じれば鮮明に浮かぶあの日の出来事。
僕が決意を固め、悪魔と取引をした日。
「あと1年と19時間12分、か…」
いや、正確には19時間をきっているだろう。
僕は、それまでに全てを終わらせることができるのだろうか…?
そんな考えの中、なぜか真っ先に浮かんだのは今日一番話したであろう彼女。
あいつは、本当に変なやつだった。
確か…―――。
「…そういえば名前、なんだったけ……」
そんなことを考えながら、僕は眠りについた。
あいにく僕は普通じゃないんでね。
それに………」
魂を回収して、本来生きるべき人の人生を強制的に終わらせてしまっている僕に、生きる資格なんてないだろうし…。
そう考えると、思わず自嘲気味な笑みがこぼれる。
「…それに?」
急に黙り込んだ僕を、彼は挑戦的な笑みを浮かべながら覗き込む。
どうせこいつのことだ。
言わなくても分かってるだろうに。
それでも、あえて問うのは、僕に言わせたいのか何なのか…。
……絶対言うもんか。
そうは思っても、その吸い込まれそうなグレーの瞳と目が合うと、つい口が滑りそうになる。
それをぐっと抑えて、顔ごと視線から逃れる。
「別に…何でもないよ」
「ふぅん…」
彼は面白くないとでも言いたそうに両手を頭の後ろで組むと、僕に背を向ける。
そして、そのまま病室の扉に手をかけた。
「じゃ、言いたいことも言ったし、俺帰るわ」
「あぁ、ご忠告どうも」
余計なお世話だったと嫌味っぽく言ったつもりだけど、そんなのもろともせず彼は優しげに微笑んだ。
「どういたしまして。
ま、せいぜい早死にしないように気をつけなよ」
「……気が向いたらね」
その優しげな表情に少し驚きながらも、薄笑いを浮かべて答えると、彼は苦笑して部屋を出て行った。
完全に扉がが閉まってしばらくすると、病室は再び静寂に包まれた。
ふと窓の外を眺めれば、雲一つない夜空に少し欠けた満月。
・・・
あぁ、あの時もこんな夜だった。
そっと目を閉じれば鮮明に浮かぶあの日の出来事。
僕が決意を固め、悪魔と取引をした日。
「あと1年と19時間12分、か…」
いや、正確には19時間をきっているだろう。
僕は、それまでに全てを終わらせることができるのだろうか…?
そんな考えの中、なぜか真っ先に浮かんだのは今日一番話したであろう彼女。
あいつは、本当に変なやつだった。
確か…―――。
「…そういえば名前、なんだったけ……」
そんなことを考えながら、僕は眠りについた。