ココロトタマシイ
第2幕
見えない心-美麗Side-
「あ!南くんっ」
私は廊下で偶然見かけた南くんの名を呼ぶ。
それに気が付いたのか、彼は振り返りながら足を止めた。
小走りに近付くと、彼は体を完全にこちらに向けてくれる。
「僕に何か用?」
「あ、その…傷大丈夫かなって」
ちらりと、この間包帯が巻いてあったであろうところを見やる。
すると、彼は呆れたようにため息をついた。
「なに、あんなのまだ気にしてるわけ?」
「そ、そりゃ気にするよ!
……私のせいで、怪我させちゃったわけだし…」
この間の包帯姿を思い出すと、ツキン、と胸が痛んだ。
私の沈んだ顔を見て、彼は再度ため息をつく。
「……別に、あんたのせいじゃない。
僕の力不足だ」
「でも…っ」
「いいか、言っておくけど、あんたの魂は僕がもらう。
他の奴に捕られるわけにはいかないんだ。
この間だって、別にあんたを助けたつもりはない。
勘違いしないでくれ」
彼は早口にそう言うと、疲れたように前髪をかき上げた。
「…とにかく、あんたが気にするようなことじゃない。
それから、学校では必要なとき以外話しかけないでくれる」
「………うん」
どこまでも突き放したような言い方の彼に。
私は小さく頷くことしかできなかった。
そんなに嫌われてるのかと思うと少し悲しくなる。
それでも彼は表情を変えないまま、「それじゃ」と一言残して去ってしまった。
遠ざかっていく背中を見つめると、なぜだか心がざわついた。
彼に悪いことが起きてしまう。
そんな根拠のない予感が頭をよぎった。