ココロトタマシイ
首を傾げたものの、そっか。と言ってまた夕日に目を向けた。




「あっ!!」


しばらく夕日を眺めて、そろそろ辺りも暗くなってきた時。

突然彼女が大声をあげた。


「何」


「今日、夕食当番わたしなの!」


「まだ買い物もしてないし…早く帰んなきゃ!!」


そう言うが早いがもと来た道へと走りだした。

戻るよりもこのまま真っ直ぐ行って曲がったほうが駅近いのに。

ま、教えるのもめんどうだしいっか。

早く帰って寝よ…。

そう思って僕も背を向けると。

後ろから自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。

振り向かなくても分かる。

この声はさっきの女の声。

きだるげに振り向けば、手を振りながら叫ぶ彼女の姿。

結構もう遠い。


「南くーん!またねーー!!」


口を囲うように手を当てて叫ぶ彼女。

それに、不覚にも少し笑ってしまった。


「そっちの道よりもこっちのほうが駅近いよ」


呆れながらも指を指して教えてやると。

何か言いながらまたこっちに戻ってきて。


「ありがとう!!ばいばいっ!」


と去り際に一言。

普通の速さで坂をかけ登って行った。


わざわざ戻って来なくてもよかったのに。

声には出さずに呟くと、僕もゆっくりと坂を登った。


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