Voice

「翔平、次移動だってよ。行こうぜ。」
「おう。」
俺は倉木翔平。高校2年生。
さっき声をかけてきたのは親友の陸だ。
「美術とかだるいよなー。将来役にたたねえっつの!」
陸がだるそうに言う。陸も俺も、運動は得意だけど美術とか、そういう類いのものは全くできない。
「翔平、俺トイレ行ってくるわ。先行ってて。」
「了解。遅刻すんなよ。」

廊下を歩いていると、色素の薄いショートカットの女の子が急いでいるのか、走っていた。

カシャンッ
その女の子の筆箱からシャーペンが落ちた。
「あ、シャーペン!」

彼女は振り返らない。
無視?いや、ないない。
「シャーペン!」
さっきより大きい声で言った。
これでも気付かねえのかよ!
俺は走りだした。
「あのっ…これ。」
俺は彼女の肩に手をおいて言った。
やっとこっちを向いた彼女は、一瞬目を丸くして

あ り が と う

と、声を出さずに、微笑みながら
こう言った。
俺はその笑顔から目が話せなかった。

ペコッと小さくお辞儀をし、彼女はまた走り出した。


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