おぼっちゃまに恋してる♡
一章 8歳との出会い

恋なんてしない。

「由里、悪ぃ。別れてくれ。」

23の春。

5年間付き合ってきた彼氏に別れを告げられた。

「どうして?!好きだって…結婚しようって言ってくれたじゃない!ほらっ…婚約指輪だって…」

1ヶ月ほど前に彼から貰った婚約指輪を見せる。

好きって。

結婚しようって。

言ってくれた。

思い出してよ…!

「…ごめん。」

「ぇ…?」

な、んで?

なんでなの?

キスだって沢山した。

ファーストキスだってあげた。

欲しいもの買ってあげたし。

「本当に愛してる女がいるんだ。」

「本当に…愛してる…女?」

「あぁ。」

「なにそれ?なんで?私のことは本当に愛していなかったの?私は遊びだったの?」

うすうす感づいてた。

もう1人女がいるんじゃないかって。

たまに女物の香水の匂いがするし。

デートの時に女の人から電話がかかってくるし。

だけど、どうせ愛人だろうって…

あなたは愛人なのよ。

遊ばれてかわいそうね。

早く気づきなよ。

って、心の中でそう思っていた。

見下していた。

だけど、本当は…

愛人は私のほう─。

「遊び…だったんだ。私。」

目の前が暗くなる。

信じてたのに。

「……ごめん。」

「~~~っ!馬鹿っ!大っきらい!!」

持っていたバッグで彼を殴り、走ってその場を去る。

もしかしたら追いかけてくれるかもしれない。

追いかけてきて

『由里、ごめん。やっぱり好きだ。』

って。

…だけど、それはやっぱり空想でしかなくて。

追いかけてくれるはずもなく。

人ごみの中で1人泣いた。

もう、恋なんてしない。

こんなにも、つらいなら。

恋なんてしないほうがいい。
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