カッコイイオトコ
声は聞こえるんだけど、何を話しているのかまでは聞こえない。

チラ、とハルカの顔を伺いながら、運ばれてきたフルーツケーキを口に運んでいると。

反対側の歩道を早足で歩いていく、長い黒髪の美女を発見した。

「あっ……」

あのツヤツヤした黒髪は、間違いなくユカリさんだ。

白いシャツにグレーのAラインスカートを履き、モデルのような綺麗な歩き方で駅の方へと向かっている。

それを目にした私は、咄嗟にバッグを掴むと、ユカリさんを追っていった。

「マユ? どこ行くんだよ!」

後ろからのナオちゃんの声に、ちょっとだけ振り向いて、

「ちょっとごめんね!」

とだけ言って、走り出す。


夕方で、人通りの多い時間帯。

道行く人々の肩にぶつかり、何度も謝りながらユカリさんを追いかける。


うう、ユカリさんも歩くの早い。

やっぱり足の長さが違うのかも~。

でも今日は走りやすいペタンコ靴。気合を入れて追いかけていたら……。


「ひゃあっ!」


段差に躓いて、見事歩道に転がった……。

< 122 / 158 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop