カッコイイオトコ
「あら……もう行かなきゃ。これから約束があるの」

手首の腕時計に目をやって、ユカリさんは私の頭から手を離した。

「ハルによろしくね」

初めて会った時のような優しい微笑を残し、ユカリさんは化粧室を出て行った。

それを見送って、少しだけ時間が流れて。

「あ、ハンカチ……」

借りたままになっていた塗れたハンカチを握り締める。

洗って返さなきゃ。

……でも。


もう一度ユカリさんに会うのが、嫌だった。


彼女と話していると、自分の中にある劣等感を浮き彫りにされてしまう。


綺麗じゃなくて。

子供っぽくて。

はっきり物が言えなくて、ウジウジしてて……

ハルヒコくんの好きなタイプって、きっとユカリさんみたいな人なんだ。

ふわりと漂う、甘くて魅惑的な香りの似合う、大人な人……


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