カッコイイオトコ
「ったく、やり返せばいいのに。馬鹿だな、お前は」

救急箱を棚の上に戻しながらタカさんが言う。

「……いえ、最初に手を出したのは俺なので……多分、あの人肩はずれてますから」

「おあいこってヤツか? そんなの気にすんなって。悪ぃのはあっちなんだからよー」

……もしかして、私の手を掴んでたお兄さんかな?

そういえば、ぐあって叫んでたっけ……。

「あの……ハルヒコさん、大丈夫ですか?」

いっぱい蹴られてたもん。見た目より酷い怪我してるかもしれない……。

心配になって聞いてみた。

「ああ、大丈夫だろ?」

「ハイ」

こっくり、とハルヒコくんは頷く。

「お嬢ちゃん、コイツ、空手有段者なんだよ。だから鍛え方が違うの。多少殴られてもビクともしねぇよ」

と、タカさんはハルヒコくんの頭をコツコツ小突く。

そうしたら横で、ハルカが「ああ!」と声を上げた。

「どこかで聞いたことあると思った……天道ハルヒコの名前。高校の時、インターハイで優勝したでしょ?」

「ハイ」

こっくり、とハルヒコくんは頷いた。
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