カッコイイオトコ
あまりの突然のことに、目を開けたままだった私は、顔を離したハルヒコくんと至近距離で目が合った。

しばらくそのまま、見つめあった後……。

ハルヒコくんが、視線を横にはずした。

「……すみません。どうしたら泣き止んでくれるかと思って」

泣き止ませるため?

そのためのキス?

いや、確かに、驚きすぎていつの間にか涙も引っ込んだみたいですけど。

ついでに頭が真っ白です。


真っ白な頭のままハルヒコくんを見つめていると、彼は視線を私からはずしたまま、静かに口を開いた。

「その、俺も、好きでもない子を、体張って助けたりはしないので……マユさんは気にしないでください」

頭が真っ白すぎて、何を言っているのか良くわからない。

「タカさんはああ言ってましたけど、本当はあの人たちのことなんか全然頭になくて。ただ、襲われてるマユさんを見たら、カッとなってしまって……思わず、手加減なしで腕を捻り上げてしまいました。
だから、殴られたのは仕方ないんです。悪いのは俺ですから」

でも、悪いのはあの人たちだよ。

そう言いたかったけど、声にならなかった。

真っ白な頭の中が、徐々に絡まった毛糸のようにグルグルになっていく。

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