カッコイイオトコ
「俺ってドジなんですよね。時々落ちるんです」

ハア、と溜息が聞こえてきた。

「だから電車でも時々転げ落ちてしまって」

「でもカッコイイですよ?」

電車を転がっている姿も、今の飛んでる姿もとってもカッコ良かった。着地も綺麗で、10点満点、って感じ。

またキュンってトキめいちゃった。

「……そう言ってくれるのはマユさんだけです」

あ、この声はちょっと苦笑気味のとき。

顔に表情がない分、ハルヒコくんは声のトーンの微妙な変化で感情が読める。

最近、それに気づいた。




隣に並んで歩き出して、ふと、他のカップルたちに目がいった。

……みんな、手繋いだり、腕組んだりしてるんだなぁ。

私も……。


大きな手をジッと見つめ、そーっと右手を近づけてみる。……だけどもう少しで触れそうなところで、引っ込めてしまった。

手を繋ぐ。

たったこれだけのことに、私の軟弱な心臓はバクバク鳴っている。

でも、これが恋人たちの第一歩。

行け! 勇気を出せ、私!


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