カッコイイオトコ
シュッと音を立ててドアが開くと、彼は真っ直ぐ前を見据えたまま立ち上がり、何事もなかったかのように颯爽と電車を降りていった……。

呆気に取られるハルカと他の乗客たち。

その横で、私は思わず呟いていた。

「カッコイイ……」

「はあ!?」

ハルカが物凄い勢いで私に視線を向けた。

「ちょっと、何言ってんのマユ! アレのどこがカッコイイの!?」

ハルカに肩をつかまれて、私の頭がガクガクと揺れた。

「え? カッコイイよ……凄い綺麗な前転だったじゃない……」

「マユ! しっかりして! あんたは普通が好きなんでしょ! アレは絶対ありえないから! 目を覚まして! マユ──!!」


ハルカが何だか叫んでいたけれど。

私の意識は素敵なお花畑に飛んでいた。

そう……

明日のピクニックで行くような、素敵な世界へ……。


< 27 / 158 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop