カッコイイオトコ
『いませんよ』

ああ、そう。確か、そう聞こえた。

何がいません?

……彼女が?

「彼女いないんですかっ?」

思わず身を乗り出したらシートベルトがガチン、と音を立てた。勢い良く前に出すぎだよ。

「ハイ」

こっくりと、ハルヒコくんは頷いた。

「ええ……そんなカッコイイのに……」

思わず本音をポロリと零してから、カッと頬が熱くなった。

あ、ヤバい。

今のは聞かなかったことにしてください……。

『好きです』ってアピールしているみたいで恥ずかしいです……。


そんな私の心の声が聞こえたわけではないだろうけど、ハルヒコくんは特に気にした様子はなかった。

ただ、少し……表情が曇った気がした。

「俺は、別にカッコ良くないですよ」

そう言って、左手でハンドルを握る。

「えっ、いえ、そんなことはないです」

私は首を振った。
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