ひと握りのブルーベリー

そして、食後にパパと泰貴はキャッチボールをしていた。
私とママとで後片付けをしていると、


「あらっ、宇佐美くんじゃない?行ってやりなさいチャメ、」


隼人さんは木の陰で顔を出してこちらを見ていた。
そこへ私は駆け寄る。


「どうしたの、隼人さん、」


「もう沙也夏ちゃんと会えないんだ、最後のお別れを言いに、あっそうだ、これを、」


「なにこれっ?」


隼人は、スマホの電話番号を書いたメモを沙也夏に渡す。


「ボクからは電話しないから、もし沙也夏ちゃんがボクの声を聞きたくなったら電話して、じゃ、サヨナラ、」


隼人は後ろを振り向き駆け戻って行く。それがどんな意味かだいたいのことは分かった私は、


「サヨナラ~、隼人さん、」


私の声が聞こえたのか、隼人は後ろ向きに手を振っていた。

それから、みんなで車に荷物を積み、西湖のオートキャンプ場をあとにして帰って行く。



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