私を、好きになれば良かったんだよ
「いや、でも恭ちゃん、ほら来年のバレンタインの先取りってことでさ!
あと、昨日散々味見に付き合ってくれたお礼も兼ねて!」
重い空気を振り払うように明るい声で私は言った。
「……余ってたから渡しに来たくせに」
う、さすが幼馴染。
全てお見通しのようである。
今日、私は友達の誕生日だったこともあってお菓子を作ってきたのだ。
夏場にチョコってどうなの、と思っていたけれど、彼女が無類のチョコ好きだったためにこれにせざるを得なかった。
そして夏場、ということで
私はこのチョコをなんとか早く消費したいのである。
ますます重くなりかけた空気の中、この場に似つかわしくない高い声が割って入って来た。
「ちょっと東崎さん!ただの幼馴染のくせに恭吾くんにちょっかいかけないでくれない?!」
そうして恭ちゃんの腕に絡みついた美少女に今度は私がげんなりした。
「げ、葛西さん……」
あからさまな嫌がりようにも屈することなく彼女は意地悪く私を見た。
否、見下した。