私を、好きになれば良かったんだよ
「……わたしを」
声が震えていく。
馬鹿なことを言おうとしていると分かっていた。
こんな、屈辱的なことを言わなければならないのか、と。
それでも止まらなかった。一度気付いてしまった気持ちは留まることを知らない。
「わたしを、……好きになれば、良かったんだよ」
泣きそうな声が自分のものだとは思えなかった。けれど紛れもなくこの声は私が発したもので。
馬鹿だなあ、と思う。
こんなに、泣きそうになってしまうくらい私はこいつが好きだったんだ。
「……ばかか」
私が思ったことと全くおんなじ言葉が上から降って来た。
彼もまた、声が震えていた。
みんなをメロメロにしてしまう低音も、いまは掠れて台無しだ。
それでもこれが、私の幼馴染だった。