私を、好きになれば良かったんだよ
「ほら、拭け」
「それ、私のハンカチだし」
「あいにくこんな殊勝なもん持ち合わせてないんだよ、俺は」
「……知ってる。幼馴染だもん」
くすっと一人笑ってしまう。
昔からこの男は変わらない。
だから、私への気持ちだって変わらないはずだって勝手に思い込んでいたのだ。
昔から私を見つめていた男の子。
彼の気持ちに気付いたのなんて、もう、思い出せないくらい昔。
16年という長い間、一緒にいて、ずっと優しくされていたせいできっと私は気付けなかったのだ。
変わらないものなど、この世にただ一つとして無いということを。
「……いつのまにか、変わってくんだね」
「あ?」
「あんたも、私も。
ずっと同じままじゃいられない。
どこかでこの関係はきっと形を変えてくんだ。良くも悪くもそれが必然」
呟いて、そして、顔を上げる。