生徒だけど寮母やります!⁑
キッチンを出てリビングに戻ってから
私の緊張の糸が切れた
自分の仕事を完璧にこなさなければ
そんな責任感による緊張だ
「う......」
ぽん!!!
「......!?」
私はライに抱き抱えられたまま、人間の姿に戻ってしまった
「ひぃぃ!」
「お、おい」
その勢いで尻餅をつきそうになったところを、間一髪ライに抱きとめられる
「はぁ......あ、ありがとう」
ライの方は、やれやれ、と私を見下ろしながら私の腕を掴み直す
そのまま腕を引っ張られて体をおこされた
「ご、ごめんなさい......」
少し体が疲れているようだ
私の場合、犬に変化するのにかなりの体力が消耗されてしまうからだろう
でも今はそんな事は言ってられない
こんなんじゃ寮母として失格
幻滅されないようにしなきゃ
ただでさえ私は出来損ないの犬なんだから
私は急いで何事もないふりをした
「ふー......よし、すぐ夕飯用意しますね!」
「お前.....息切れてる」
「え.....だ、大丈夫!全然なんとも無いので座って待っててくだ」
そのとき
ぱちんっ
「痛ああ!」
ライが私にデコピンをして、額に痛みが走った
額を手で押さえ、私はライを見上げる
「なにす」
「体に負担かけたんだ、座ってろ」
「で、でも!」
「あのババアが何でお前をキッチンから退場させたと思ってんだ」
「え..........?」
そっか
火野くんは全部お見通しなんだね
でも私だって、生半可な気持ちで寮母をやってるわけじゃない
彼が言おうとしてくれてることは分かるしありがたいが
甘んじてそれを受け入れる気にはなれなかった
「だ、だからって休んでるわけには」
「自分のこと、分かってんだろ」
「......」
ライの目が少し怒っているようで
「その体質、変化で力使うタイプだろ」
「ち、ちが......」
認めたくない
私は寮母だから.....
そんな事言ってられないのに.....
ライは煮え切らない私の背後にまわって、私の目を隠すように撫でた
瞬間、私に睡魔が襲いかかる
「寝てろ」
「ゆ......うはん......」
私はそのまま深い眠りに落ちた