生徒だけど寮母やります!⁑
広い校舎をしばらく歩いた後、岬は大きな扉の前で立ち止まった
『生徒会室』
ドアノブに手をかけてガチャリとあけると、「どうぞ」と三人に中へ入るよう促す
3人は静かに部屋に足を踏み入れた
景を寮母に戻すための交渉をした校長室も豪勢だったが、こちらも劣ってはいない
大きなコの字型の机
金色の額縁に入った絵画
つるりと曲線を描く花瓶と、生けられたオレンジ色の花々
カーテンがサイドで結ばれた大きな窓
生徒会長の他には誰もいない
しかしどこか
違和感のある部屋だ
きっと、魔術科と妖術科で、なんとなく生徒会室のスペースを分けているせいだろう
「岬、ありがとう。それと、布川君と、小高くん、わざわざ来させて本当に申し訳ない」
三人に気づいた生徒会長が、深く頭を下げたことに内心驚きつつ
咲夜はツカツカと生徒会長のところまで歩いた
「急に生徒会室に呼び出したりして、一体何があったんですか。もし、景や結斗に何かあるならすぐに言ってください」
彼の緊迫した表情に、気まずそうな顔をしながら生徒会長は口を開いた
「あくまで推測だが、現在、魔術科の役員たちが集まっている可能性がある。
生徒会室にも教室にも魔術科役員の姿が一人もない。普段ではそんな事はないんだ」
「ということは、魔術科役員の10人で今なにか企んでいるということですか」
生徒会長は相変わらず淡々と言う爽馬をしばらく見つめてから、ふわりと笑った
「うん、そうかもしれない。でも魔術科の皆は一生懸命やってるつもりなんだ。
例えやり方が間違っていたとしても、生徒会の一員として頑張ってる。それを正しい方向にむけるのは僕の役割なのに、迷惑かけてごめんね」
儚げに笑う市河生徒会長
この人はきっと、優しい人なんだろうと咲夜は思う
ちょっと甘いけどな......
彼を見つめる弟の表情からは、何を思っているのかはよく分からない
その時、書記、岬のスマートフォンがバイブ音で震え、岬は画面を見た
「あ、市河(会長)、橘が今魔術科の連中を見つけたって!」
「どうだったって!?」
「さぁ、なんか怪しいけど、寮母さんや伊吹はいないみたいだな」
それを聞いて、会長だけでなく、咲夜や爽馬もため息を漏らす
2人を申し訳なさそうにみつめてから、会長は口を開いた
「でも、今下手にこちら(妖術科役員)が動いて魔術科役員の皆を刺激したくないんだ。
もしかしたら何度か、男子寮Bの寮母さんや、伊吹君に迷惑をかけることがあるだろう。その時は、申し訳ないが、2人にも彼らを助けてもらいたい」
言われなくてもそのつもりだ
「わかってます」
咲夜が頷くと、会長は「ありがとう」と微笑んだ