生徒だけど寮母やります!⁑
景はつい興奮してパンをぽーんと放り投げながら走ってきたことを思い出し、勿体ないことをしたなぁと少々反省する
生徒会の人たちも驚いていたようないないような……
「でっ、でも、生徒会の人たちをうまく撒(ま)くことができたみたいね」
そろそろ昼休みも終わってしまう
教室に戻らなくてはならない
景は床についていたスカートを手で払いながら立ち上がり、ライに微笑みかけた
「焦ってライに連絡しちゃったけど、すぐ来てくれてありがとうね」
「……いや」
ライはしゃがんだまま、目の前にいる景を見上げた
「お前」
「ん?」
「まだ九雷たちには自分が不完全な狼女だって言ってねえの」
ライは、さきほどの景の母との会話を思い出す
母として心配する京子の思いを聞いたこともそうだが、なによりこのまま黙っているのは景にとって良くないことだと感じている
おせっかいなんて自分らしくないとは思うが、ズルズルと狼女を隠し続ける景のことを、ライは気にかけていた
「心配、してくれてたんだね」
景は申し訳なさそうな顔になりながら、小さい声でつぶやいた
「……まぁ心配っつーか。九雷たちにバレたときに悲しい思いをされるのは目に見えてるからな」
「……そうだよね。信じてもらえてなかったんだって、思われちゃうよね」
すべてを本人から聞いたわけではないが、景の姉のことを知ってるライは、景に悪気があるわけではないことも知っているし、なかなか言い出せない気持ちもわかる
しかし、そろそろ隠し続けるのも本人が苦しくなるだけではないだろうか
「九雷は、九雷たちはそんなことでお前から離れて行ったりしねよ。何かあったら俺が絶対に守る」